抜歯の翌日は、念のため有給休暇の申請を

パソコンや読書、同じ姿勢で長い時間の単純作業などを続けたりすると親知らずが疼く経験ありませんか。

肩凝りから始まって、それをこじらせると親知らずに症状があらわれてくるのですが、いったん疼きだすと簡単には収まってくれないのです。
いっそのこと抜歯をしてしまえば、この悩みから永遠に解放されることは判っているのですが、大人になってから虫歯でない歯をわざわざ抜くと

いうのは勇気がいりますよね。

ましてや、私の親知らずは上下合わせて4本ともあらぬ方向に向いて生えているのです。
近所の歯科医院の診察を受けた後、医師がいうには、自分(女性の歯科医師)では無理なので、大学から男性の歯科医師を呼んで抜歯してもらう

ように手配しますとの事。

そんな言葉を聞いただけでもう泣きそうになりました。しかしこのまま親知らずを放置しておくと他の歯にも影響が現われてしまうそうです。

ちょっと大げさですが、意を決し、術後の安静期間を確保するため有給休暇を申請して抜歯に臨む決心をしました。

抜歯を担当してくださったのは、歯科医師というより屈強なアスリートという感じの若い男性でした。白衣の袖から出ているがっしりと筋肉がつ

いた太い腕が印象的でした。

歯茎を切開され、親知らずが器具で固定されてグイグイとひっぱりあげられているのを感じました。顎だけでなく頭までがシートから浮き上がって

しまうくらいの力任せの手術です。しかし、なかなか抜けません。開けている口は疲れてきて、顎関節が痛んできました。

鼻の穴からは鼻水が、目からは涙が、痛くも悲しくもないのに溢れてきます。

結局、歯科医師の上腕二頭筋VS私の親知らずの戦いでは私の完全勝利となりました。

引っこ抜くことを諦めた歯科医師は、とうとうノミとトンカチのような器具を持ち出してきました。歯を割って、いくつかに分割してから取り除く

という戦法に切り替えたようでした。いくら麻酔が効いているからといっても、トンカチで叩かれている衝撃は頭蓋骨まで響いてきます。格闘する

こと数十分、もう口を開けていることも限界になってきたころ、口の中でバラバラになった親知らずがピンセットでつまみ出されました。

縫合が終了したときには、私もマッチョ歯科医師もぐったりと疲れ果てていたと思います。

歯科助手さんからはねぎらいの言葉をかけていただき、帰りには受付嬢の常套句の「お大事に」の言葉が胸に沁みました。帰宅した後、数時間後に

はリンパと頬がみごとに腫れ上がり、処方された鎮痛剤のお世話になりました。当分、人前に出られない顔になってしまったうえ、翌朝には熱発し

ました。事前に有給休暇の申請をしておいたことだけが救いとなりました。