野鳥達がやってくる庭の樹の出来事

我が家の庭には大きなモクレンの木が植わっています。

春先になると花の蕾が膨らみ始め、やがて白い大きな花びらをつけて咲きます。

そしてそれを狙ったかのようにやってきて、花をついばんでいくのがヒヨドリです。

大きさはスズメ以上、鳩以下のおおよそ全長約27cm前後。体格はほっそりとしていて、灰色っぽい羽根に頬はうっすらと赤い。

「ヒーヨ!ヒーヨ!」と大きな声で鳴くあいつです。

花びらを一口、二口と口に入れては、次の花へとどんどん移動していくので、せっかく咲いたモクレンの花は瞬く間に散っていってしまいます。

鳥のさえずりや、食事の風景は見ていて和むものではあるのですが、少しばかり憎くも感じてました。

モクレンとは違う別の木に、小枝の塊があることに気づいたのは数年前の少し暑くなってきた5月頃でした。

まだそこに小枝が密集してる程度としか認識していなかったソレは日に日に増えてゆき、やがてすっかり「巣」と呼べるものに仕上がっていまし

た。

ある日の昼下がりに木が見える窓からじっくり眺めてみると、その巣を作っていたのはヒヨドリのつがいでした。

春先にモクレンの花目当てにやってきたヒヨドリたちでしょうか。

せっせと木の枝を運び巣を作り、どこから持ってきたかもわからないビニール紐もひらひらと風にたなびいてました。

数日後、ヒヨドリの出入りが少なくなりどうなったのかと思い、樹の葉から覗き込んでみればヒヨドリと目が合いました。

巣にちょこんと居座り、覗き込んでもチラリとこちらを見るだけで身動きする気配もない、不動の構えでした。

巣ができれば次に起こることは予想できますよね。卵を抱えていました。

片方は温め、片方はいつものようにヒーヨ!と大きな声を上げ高いところから見張っているのを何度も見ました。

抱卵、見張り、食事、つがいで協力して卵を温めるんですね。

ヒヨドリが巣に居座っているのを2週間ほど眺めてたでしょうか。

卵って生まれるの時間かかるんだなぁと思いながら、あまり変化が無くなったことで少しばかり興味が薄れていました。

23週間ほど経ったころでしょうか。

また再びヒヨドリの出入りが激しくなり巣を覗いてみると、体のサイズには見合わない大きなくちばしが3つほど見えました。

いつの間にか卵から孵っていたようです。

親になったヒヨドリは雛にエサを与えるために、せっせとせっせと入っては出ていくを繰り返していました。

この雛たちの成長を眺めれることにうれしさを感じつつ、いつか大きくなったらいなくなってしまうんだろうことを想像したら悲しくもありまし

た。

しかし、別れは思ったよりも早くに訪れました。

ある日の深夜に激しく鳴く鳥の声を聴きました。

その時はそんなに気に留めることもしなかったのですが、翌日家族から「ヒヨドリの巣が荒れている」ことを聞かされました。

その深夜に聞いた鳴き声は、ヒヨドリが襲われたときの鳴き声だったのでしょうか。

それ以来、どこかでヒヨドリの鳴き声はするものの、庭の樹の巣に出入りすることはなくなりました。

数週間、数か月経つうちに、鳥が乗っても崩れないほど立派に組んであった巣は、すこしずつ崩れていき

1年もするころには、すっかり形が無くなってしまいました。

毎年、春先になると庭のモクレンの樹にはヒヨドリがやってきます。

あの時のつがいのヒヨドリなんだろうか、雛たちはどうなってしまったのだろうか、ヒヨドリを眺めながら今でも心配になります。

今年もモクレンは立派に咲いたのにヒヨドリはあまり来ません。

今年は食べられないからモクレンの花がたくさん咲いてるのを嬉しく思う反面、少し寂しくなります。

そんなモクレンに珍しいお客さんが来ているのに気づきました。

はじめはスズメかなとも思いましたが、なんだか少し体が黄色く、鳴き声もピロロとスズメとは違う鳴き方でした。

カワラヒワでした。

カワラヒワもどうやら我が家の庭の樹に巣を作り始めたようで、木の枝や綿のようなもの口にくわえてやってきます。

高いところから周囲を警戒しながら、何段階に分けて枝を移動して、巣を作ってる樹にもぐりこんでいきます。

そんなに警戒しても、私たちにはバレバレなんですけどね。

そのカワラヒワも最近出入りが少なくなり、そっと巣を覗いてみれば、ヒヨドリの時のように目があいました。

またヒヨドリの時の二の舞にならないだろうかと不安になりますが、ヒヨドリの時とは違う樹だし、場所も高い。

きっと大丈夫だろうと今日もそっと見守ってます。

暖かくなったころに雛たちが巣立っていくのが楽しみです。